孤族の国Ⅱ

 今朝(12月29日(水)の朝日新聞朝刊の『孤族の国 39歳の餓死』を見て驚いた。昨年4月に北九州市門司区で起きた餓死事件の取材記である。餓死したのは39歳の男性で、高校時代はラグビー部に在籍していたガッチリした体格で、健康面に問題を抱えていたわけではないそうだ。そんな男性が、何故餓死したのだろうか。
 餓死した男性は祖父母と床屋を営む両親と兄の6人家族。借金が原因で父親が行方不明になり、祖父母が死に、兄は大学進学を機に家を出た。本人も専門学校を出て富山県の会社に就職したが、1年ほどで退社して福岡県内の会社に入り、2001年からは居酒屋などでアルバイトとして転々としたそうだ。母親が死に、その後5年間は独り暮らし。こんな独り暮らしの人は全国を探せば、いくらでもいるのではないだろうか。
 餓死した男性の叔父は「餓死とは意外やった。できるか? 40前の男が食えないまま閉じこもって死ぬなんて」と言い、更に「誰も悪くない。本人の責任」と続けたそうだ。私もそう思うが、餓死した男性は門司区役所に生活保護の相談に行ったが、「幅広く(仕事を)探してみる」と言って保護を申請せずに帰ったそうである。このことから、気弱で優柔不断、どうすればいいのか自分で考えることができない性格が垣間見えてくる。他人からあれやこれや指図されないと何もできない様に見える。身近に親身になって相談に乗ってあげる人がいないので、オロオロして何をしたらいいのかが分からないうちに餓死してしまったのだろう。
 社会や世間の人との交わりがないのが原因なのだろうか。現代社会は人と人との繋がりが希薄な状況である。私も昔ながらの人付き合いは苦手で、できれば避けて通りたいと思っている。ましてや、気弱で優柔不断、どうすればいいのか自分で考えることができず、他人からあれやこれや指図されないと何もできない40男とは関わりを持ちたいとも思わない。
 私も親兄弟と離れて住んでおり、身近な友達はいないし近所付き合いもない(顔を合わせれば挨拶をする程度)。辛うじて勤務先の人と繋がっているほか、立ち飲み屋で合う顔見知りがいるだけである。何かあったら相談するのは妻子のみである。まあ、部下を持つ中間管理職をやっているから、餓死した男性と同じ境遇になったとしても、ただ座して死ぬのを待つことは無いだろうが、いささか心細く感じる。
# by yousui-nobidome | 2010-12-29 09:42 | 日日悶悶

孤族の国

 朝日新聞で昨日(2010年12月26日)から『孤族の国』の連載が始まった。興味を大いにひくテーマだ。今東京23区では毎日、平均10人が孤独死するそうだ。今年の国勢調査の結果は来年発表されるそうだが、1人世帯が「夫婦と子どもからなる世帯」を上回るのは確実のようだ。『単身急増社会の衝撃』(藤森克彦著)に描かれた20年後の日本では、50~60代の男性の4人に1人が一人暮らしになり、50歳男性で3人に1人は未婚者になるそうだ。50~60歳男性というと、まさに今の私自身に当てはまる。私は30歳で結婚し、子どもは3人おり、家族5人で一つ屋根の下で暮らしている。私自身が一人暮らしをしている姿は想像できない。20年後の日本だから、今30~40歳の人が該当するのだが、この年代の人の既婚率はどのくらいなのだろう。最近の若い人たちは結婚しない(できない)人が多いと聞いている。私の従弟の一人も間もなく50歳になるが独身であり、甥の一人も30歳を超えているが独身である。私の長男は20代だが、間もなく30代になる。他人ごとではない。
 結婚する、しないは個人の自由だから周りがとやかく言うことは無いが、歳をとってから寂しく感じて妻を娶るのも大変のようだ。日本人を娶るのを諦めて、外国籍の女性を選ぶ日本人男性は年間3万人にのぼるそうで、ここでも中国籍の人を選ぶ人が1万2千人もいるそうだ。でも、上手くいく例は稀のようだ。記事に取り上げられた人は2度結婚したが破綻し、この間450万円を使い、蓄えの全てを吐き出してしまったそうである。
 若い人も婚活に力を入れている人も多いそうだが、ゴールにたどり着くのもなかなか大変のようで、結婚を断られて精神的に落ち込んでしまい、『婚活外来』の看板を掲げるクリニックの門をたたく人が多いそうだ。
 今後、『2020/30年問題』が日本のキーワードになるだろう。『2020年問題』とは団塊の世代の高齢化と「多死時代」の到来だそうだ。毎年の死亡数は出生数の2倍の150万人台になり、高齢化率は30%を超すそうだ。『2030年問題』は、未婚や離別により単身世帯が急増するそうで、団塊ジュニア世代が中高年になって起こるそうだ。
 ウ~ン、これからの日本は明るいことが無くなって、暗い時代になりそうだ。自分だけはなんとか明るい生活を送るよう努力しなければと、年の瀬に思った。
# by yousui-nobidome | 2010-12-27 11:15 | 日日悶悶

平成23年度予算案閣議決定

 平成23年度予算案が閣議決定されたそうだ。一般会計の総額は92兆4116億円となり、平成22年度当初予算額を1124億円上回って過去最大になったそうである。気になるのはその財源である。税収は3兆円増の40兆9270億円を見込んでいるそうだが、新規国債の発行額は44兆2980億円になるそうで、2年続けて税収を上回ることになった。異常な状態ではないか。今、NHK総合に野田財務相が出演してインタビューを受けているが、何とも他人ごとの様にシラーッとした顔で受け答えしている。全然危機感を持っているようには受け取れない。サラ金の総量規制では年収の3分の1を超える金額は貸出できないようになっているが、国の予算では許されるようだ。
 朝日新聞朝刊によると、『2011年度予算案暮らしこうかわる』で5項目掲げられている。①子ども手当:2兆2077億円、②小学1年生の35人学級:2085億円、③基礎年金の国庫負担割合(2分の1)を維持:2兆4897億円、④求職者支援制度:628億円、⑤農家の戸別所得補償:8003億円だ。どれも今のところ私とは直接関係ない項目である。
 で、気になったことは②小学1年生の35人学級である。同じ紙面の33面に『精神疾患で先生休職5500人』という記事が載っている。精神疾患での求職者は93年度から増加に転じ、17年連続で増えているそうで、20年前の5倍になっているそうである。増加の理由は「保護者や地域住民の要望の多様化や、長時間労働、複雑化する生徒指導など、様々な要因が重なっている」(文科省)と見ているそうだ。
 また、教職員の処分は前年度から倍増し、7981人にのぼったそうだ。こんな状況の中で35人学級のために教員が増えることになって大丈夫なのかと心配してしまう。文科省だけでなく日教組も何か対策を立てないといけないのでは?
 ⑤農家の戸別所得補償も気になる項目である。TPP関連で俄然注目を浴びている農業である。近年、農業に従事したい人は増えているようである。しかし、農業に従事するにはハードルが極めて高いのが現状である。農地の取得に多額のお金が必要であるし、農業技術を学ぶのも大変である。結局、農家の子どもでなければ農業には従事できないのだ。しかし、農業の経営規模が小さいので、農家の子供でも、親が元気なうちは農業に従事できない。親子で農業に従事すると食べていけないのだ。で、取り敢えず子どもは勤め人(サラリーマン)で暮らし、親が高齢化で農業に従事できなくなって、やっと農業デビューとなるが、勤め人から農業への転身は困難だと思う。私の住んでいる地域は、かっては農村地帯であったが、都市化にしたがって耕作地は住宅地に変貌している。それでも辛うじて農地が残っているが、農業に従事している人は高齢者が多い。で、死ぬと農地は戸建て住宅やマンションになってしまう。
 予算だから今ある社会に対して、どう金を出していくかが焦点になっている。でも、現在の社会のありように対応しようというのも大切だが、社会の仕組みを変えるということも大事ではないかと思うのである。不都合をカバーするために金をバラ撒くという発想ではなく、どういう仕組みにしたら金をバラ撒かなくて済むかという発想が必要ではないだろうか。そのために使う金であれば無駄金とはならないと思うのである。
# by yousui-nobidome | 2010-12-25 10:18 | 日日悶悶

女性の勤労は絶対的価値なのか

 2010年12月24日(金)の朝日新聞朝刊の『声』欄にタイトルの投書が載っていた。非常勤教師の『菅 寛子』さんの投書である。
 菅さんは「待機児童の解消や24時間対応保育所の拡充など、女性が子どもを産んでも働けるようにすべきだという意見が強まっている。政治家からは、女性の社会進出を妨げるから配偶者控除も廃止または週べきだという意見が聞かれる。」ということに疑問を持ち、「主婦は次世代を担う子どもたちを育てる立派な仕事ではないのか。いま、政治がすべきことは、働く女性の支援に偏るのではなく、女性が子育てに専念する選択ももっとできるようになる仕組みづくりだと思う。」と結んであった。正に正鵠を射た意見だと思った。
 民主党政府はバラマキと批判されている子ども手当をはじめ、税制大綱(大綱と言えるのか些か疑問だが)で配偶者手当の縮小や青年扶養控除の縮小など、ソロバンづくで数字合わせをやっているようにしか思えない面がある。私は一部の人を除いて、子どものいる女性が働くのは収入が少ないからだと受け止めている。可愛い子どもを他人任せにしてまで働くのは『生活費を稼ぐため』だと思っている。母親は、できれば自分の手で何から何まで世話をしてあげたいと思っているはずであろう。私は妻と結婚した時、
「子どもができたら仕事は止めること。」と約束し、その通りにしてきた。妻は某都市銀行に勤務しており、給料は私よりも高かった。でも、生まれた子どもは夫婦で育てるのが決まりだと考えていたので、私はバリバリ仕事をし、妻は子どもを真っ当な人間に育てることを仕事にした。金銭面や物質面では豊かではなかったが、豊かな生活を送ってきたと思っていて、後悔はしていない。だから菅さんの言っておられることは、よく理解できる。いま学校で問題になっている『イジメ』の問題も、0歳児保育やその後の幼稚園、小学生の学童保育への丸投げが、少なからず影響しているのではないかと思っている。
『子どもを安心して産める社会とはどういう社会なのか』を、政治家を含めて皆で考えてみるべきではないだろうか。
# by yousui-nobidome | 2010-12-24 08:37 | 日日悶悶

自転車亡国論Ⅱ

 先日『自転車亡国論』を書いたが、その後、12月17日(金)の朝日新聞朝刊の『オピニオン 異議あり』に吉村作治名誉教授も『危険な自転車を止めろ 免許制の導入で』と主張されていた。概ね私と同じ感想を持たれていて、
「私と同じように考えている人もいるのだ」と安心した。
 しかし、教授は私よりもう1歩踏み込んでいて、
「自動車の運転と同じように、自転車も免許制にしろ!!」と主張されていた。それは、
「マナーやモラルではもう無理。日本の文明の これは末期症状です」という思いがあるようです。

 日本では自転車は年間約1千万台が販売されているそうで、1台を5年間乗るとすると6千万台が日本列島を走り回っていることになるそうだ。
 警察庁によると、2009年の自転車と歩行者の事故は2934件。自転車事故全体は減少傾向にあるが、対歩行者の事故は10年前に比べて3.7倍に増えているそうです。

 この状況を踏まえると、やはり教授の様に強硬論が出てくるのも仕方ないかと思う。しかし、自転車事故の場合(に限らないが)、加害者を罰するのも重要だが、負傷者の治療費も重要である。自動車の場合は自賠責保険に強制的に加入させられ、大方の人は任意保険にも加入して事故に備えている。自転車の場合はどうだろうか? 私は自分は自転車に乗らないが、家族が乗っているのでバイコロジー保険に加入している。でも、街で自転車に乗っている人はどうだろうか? そんなものに入りそうもない貧乏臭い人も結構乗っている。事故が起きた場合はどうするのだろう。免許制にするのもいいが、まず自賠責保険の自転車版を作るのが先決ではないだろうか。教授もこの点を指摘しているが。
 とにかく自転車に関する規制を強化して、取り締まる人を増やしても、それを破る人は必ずいる。例えば、運転中の携帯電話の使用は禁じられている。『取り締まりを強化する』と発表した当初は皆携帯電話の使用を控えていた。今はどうだろうか。運転中に携帯電話を使っている人は多い。飲酒運転や酒気帯び運転も取り締まりが強化されているが、一向に減る気配が無い。だから、取り締まりを強化してもイタチごっこであるマナーやモラルの向上こそが大事で、それも幼稚園児や小学生からのうちから身に付けさせる必要があると思うのである。
# by yousui-nobidome | 2010-12-19 22:17 | 日日悶悶