万引き

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 先日、BOOK-OFF(古本屋さん)へフラリと入って書棚を見ていたら、1冊の本に目が留まった。荻原浩さんの話題の新刊「明日の記憶」である。10月25日に発行されたばかりの本が、1週間もたたないうちに、もう古本屋に並んでいるということでビックリした。定価1,500円が1,100円なので、古本としては高いが発売直後なので致し方ない、400円廉く買えるのだからということで買うことにした。
 家に帰って読もうとしたときに、もう1度ビックリした。表紙を開けるときにペリペリペリッと糊が割れる音がしたからだ。。ハードカバーの新刊では糊が割れる音がするのは当然であるが、古本屋で買った本で糊の割れる音がするとは・・・・。表紙の袴がついていることはよくあることだが、読者カード(ハガキ)もそのまま挟まれており、しおりの紐も中ほどのページに丸まって挟まれていた。
 そこでピ~ンときた。最近、本屋で本を万引きして古本屋に売ることが流行っているということを聞いたことがある。まさにこの本はそういうことなのだ。今時、1,500円もする本を買って、読まずに古本屋へ売ることなど普通はないことだ。
 最近、本屋がドンドン廃業に追いやられているそうだ。日本人の活字離れがいわれて久しいが、原因は活字離れだけでは無さそうである。本屋さんが本1冊売って得る利益は売値の2割ほどと聞いたことがある。そうすると1冊1,500円の本を万引きされると1,200円の損になる。本屋さんは零細企業が多く、小さな本屋さんが多い。小さな本屋さんは万引きを防ぐ手立てを講じるのが資金的に難しい。人を雇う金もなければ、万引き防止装置の導入資金もない。ということで、結局廃業せざるを得ないのだと思う。
 万引きした本を買う人がいるのが悪い。確かにそういう理屈にはなる。けれど、古本屋も商売としてやっていることだから、綺麗な本を持ち込まれたからといって、
「万引きした本じゃないですか?」と聞くわけにもいかないだろう。かといって、個人から古本を仕入れてはいけないといっても、本は再販商品になっているから、出版社から売れない本を仕入れて安く売るわけにもいかない。旧態依然とした売り方をしている本屋さんに問題なしとはいえないが、前述した如く、本屋さんには金がないのが現実である。旧態依然でやっていくしかないのである。
 これは、社会的に法を犯すことに何の罪悪感を持たない人間が増えてきたことに問題がある。こう書くと、
「今の学校教育が云々」とか、
「今の親はなってない。躾をきちんとやらない親が悪い。」といったことを言う人が出てくると思う。しかし、問題はそれだけで済むことではない。社会全体の問題として捉えて、何がしかの対策をうっていかなければ、将来の日本は『泥棒社会』になってしまうに違いない。

(蛇足)
 以前、松井計さんの自身の体験を綴った小説『ホームレス作家』の中に、古本屋がどの分野の本に強く、どの分野に弱いかを見極めて、廉い古本屋で買った本を高く買ってくれる古本屋に持ち込んで、その利ざやを稼ぐというくだりがありました。
 即ち、強い分野の古本は高い値で売っているが、弱い分野の本は二束三文で売っている。そこで、弱い分野の本を廉く買い、その分野に強い本屋に持ち込むと高く売れる。
 BOOK-OFFは、基本的に無傷か無傷に近い本ではないと買い取ってくれないようです。BOOK-OFFの店員は若い人が多く(多分、アルバイト?)、傷がついていてもその本の価値を分かる人がいないことから、このような商売方法になっているようです。
 従って、新刊書をBOOK-OFFに持ち込むと高く買い取ってくれるようです。おまけにポイントまでくれます。
 
by yousui-nobidome | 2004-11-06 17:53 | 日本を考える


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